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  • AL | 東京都
  • 恵比寿映像祭2026 地域連携プログラム「言葉なき声、密やかな響き ―イブオーク チョウテイ 磯谷博史」Wordless Voices, Quiet Resonance. – Ebe Oke, ZHANG TING, Hirofumi Isoya

  • 2026/2/5(Thu)〜2/15(Sun) 終了

展覧会の見どころ

本展では、ヒトを含めた生きとし生けるものを取り巻く多声的共生世界のありように着目し、鳥や昆虫、そして微生物や細胞自体が発する言葉なき声や見えない気配を掬い上げる3名のアーティストを紹介する。

AL/TRAUMARIS

展覧会内容

会期|2026年2月5日(木)〜2月15日(日)会期中無休
11:00-19:00(最終日は18:00まで)
料金|500円(消費税込)温かい飲み物を提供しております)
会場|AL  東京都渋谷区恵比寿南3-7-17, 1F
Tel: 03-5722-9799
企画:住吉智恵(TRAUMARIS)

会期中イベント:
2月7日(土)16:00~19:00 オープニング 17:00〜トーク
2月14日(土)15:00〜(終演時間未定)ダンス&サウンドパフォーマンス
音:イブ・オーク 演出・振付・出演:菅沼伊万里 出演:細川麻実子
入場料:3,000円(消費税込)(展示観覧料・1ドリンク込)

恵比寿映像祭2026は総合テーマとして、メインキュレーターの邱于瑄氏の考案による台湾語の言葉―「日花聲音」*を提示している。(*異なる声音が多声的に折り重なる空間にやわらかく木漏れ日が差し込む様子) そのたおやかな漢字の綴りも詩的な情景も、いま苛烈な現代社会を生きる私たちが希求する理想郷を思い描かせてくれる。
しかし現実には、多様な角度の視点や思考が無秩序に混濁し、そこから突出したラウドで勇ましい主張や扇動が世論を支配している。社会的少数者や弱者はその声なき声を掻き消されないよう多様性の重要さを訴え続けるが、異なる階層の声は分断され、互いの声は聴こえてこない。

一方、自然界のあらゆる生き物は、ただその生をまっとうするために、ヒトの耳に聴こえる/聴こえないに関わらず独自の音声を発している。音声だけでなく化学物質や電波など特有のネットワークで交信する生き物もいると聞く。世界はそれらが響きあう密やかで豊かな不協和音に満ちているが、少なくともこれまでは驚くべき均衡で調和を保ち続けてきた。だが万物に強大な影響をもたらした人類が跋扈する人新世、自然界の調和は崩壊の臨界点に近づいている。これまでかろうじてヒトと共存してきた動物や微生物がいま遠慮なく結界を超えてくる現象や災害は、釣り合いの取れなくなった生態系に動揺した生き物たちがパニックに陥っていることの現れだろう。

本展では、ヒトを含めた生きとし生けるものを取り巻く多声的共生世界のありように着目し、鳥や昆虫、そして微生物や細胞自体が発する言葉なき声や見えない気配を掬い上げる3名のアーティストを紹介する。

イブ・オークは米国サウスジョージア出身で、ロンドンを拠点とする作曲家兼マルチメディアアーティストである。カールハインツ・シュトックハウゼンに作曲を師事し、英国移住後はダンス、映画、アートインスタレーションの音楽制作に注力。アーティスト集団ジェネラル・アイデアの創設者AAブロンソンからの委嘱作『FIELD』では、峰川貴子の彫刻的なボーカルが特徴的な三部構成のサウンドスケイプを制作した。2016年にはローリー・アンダーソン、ブライアン・イーノとコペンハーゲンのスタジオで1週間を過ごし、コラボレーションライブアルバム『DOKUMENT #2』を発表している。2022年のアルバム『SPECIES』では、アイデンティティ、テクノロジー、そして自然界との関係性を探求する実験的な楽曲を発表。2024年に初来日し、宇川直宏率いる配信スタジオDOMMUNE(東京・渋谷)にてライブパフォーマンスを展開した。
オークは幼少期にアメリカ南部奥地の鳥類保護区で過ごした体験に影響を受け、非人間的視点といったテーマを掘り下げてきた。自然界のパターンや音(菌糸体の構造、鳥や昆虫の鳴き声など)を楽器として加工し、再構成することも多い。2021年、テート・セント・アイヴスで発表された『Aviary』では、非線形パーカッション、プログラミング、弦楽四重奏に、多重化された自身の声、鳥の鳴き声と生成AIを組み合わせたオーディオビジュアルインスタレーションを手がけた。本展では、日本に棲息する鳥類の鳴き声をもとに新作を制作。会期中の2/14(土)には、振付家・演出家の菅沼伊万里を迎え、ダンスと音楽のライブパフォーマンスが上演される。

張霆(ZHANG TING)は中国・山西省出身、2023年に京都芸術大学修士を修了したばかりの若いペインターである。彼女にとって制作とは「精神の解剖」であり、身心を理解するための方法であるという。幼少期からの自身の体調不良にまつわる体験や、近年故郷の祖母が認知症を患うようになったことをきっかけに、身体と精神の関係をめぐる、微生物、遺伝物質、脳腸軸、感情や記憶の相互作用に関心を寄せる。なかでも抗生物質の濫用、ヒトマイクロバイオームと健康、腸内微生物群の精神疾患への影響といった医学的問題を芸術的視点から研究し、ヒトの目には見えにくい微生物と人間の関係と相互への影響を視覚表現することに挑んでいる。
黴で変色した古い人体解剖学図鑑を参照し、医学的な図像や解剖学的なアプローチを用いて、筋肉や神経、内部構造のイメージを多層的に構成したその絵画は、微生物の変容の豊かさや顕微鏡で観察したヒトの表皮の色や質感をも表現している。経年変化と見紛うような独特のテクスチュアと色彩は、彼女の作品世界に抑制の効いた洗練をもたらしている。本展では、微生物・遺伝子・神経分布などを手がかりに新作の大型絵画を制作。身体と精神、医学と生活、腸と脳などの密接な関係において、目に見えない微生物や細胞が発信する「声なき声」が重要な役割を担うことをあらためて認識させる展示となる。

磯谷博史は東京藝術大学建築科を卒業後、同大学院先端芸術表現科とロンドン大学ゴールドスミスカレッジで美術を学んだ。これまで多様な彫刻や写真などを通して、現実の認識や物質と時間の関係性を探求してきた。知的なパズルを想起させるコンセプチュアルなアプローチでありながら、物体としての強度を磨き上げた磯谷の作品は、観るもの自身の居住まいや世界認識を意識させるような緊張感を有している。
本展では、昆虫の生態と人間との関わりをテーマとする2つのシリーズを展示する。アンバー(琥珀)を彷彿とさせる彫刻『12時間』(2005年)は、作家のスタジオに迷い込み落下した虫たちを、庭先にあった手近な小石を型取りレジンで注型した立体物に閉じ込めた作品。直截なタイトルも実際にかかった制作時間から取られている。琥珀は、古代の植物の樹液が悠久の歳月をかけて化石化した物質であり、時に偶然に昆虫を閉じ込めることがある。その稀少かつ神秘的な成り立ちが現代のオブジェクトの視覚的な美と結びついた時、名もなき虫の失われた声もまた封じ込められ、物質と生命の時間は脳内で錯綜する。
あたりを仄かに赤く染める『同語反復と熱』(2021年)は、ひと昔前まで生活の中にあった誘蛾灯を思わせる作品だ。建築用LED照明を光源とする本作品は、本来は一定の角度で入ってくる天体の光を頼りに進路を取る蛾がその習性ゆえに混乱をきたし、自らをライトに打ちつけ続ける行動を、蛾の鱗粉を混入した蜜蝋が施されたチェーンにより表現している。この現象は、4億年もの時間をかけて進化した昆虫生態の秩序や習性が、150 年に満たない人間の文明がつくり出した人工光によって狂わされた結果だという。キュレーターの豊田佳子は本作について、「我々は、経済成長が唯一の正解だと信じて突き進んできたために、放射能やウイルスのような目に見えない脅威と共存していかなければならなくなった。人類が誕生するはるか前から存在していた昆虫は、どのように危機を乗り越え生き延びてきたのか」(2021年RealTokyo掲載)と、視線の遠近を進化という次元に広げて問いかけている。かつて光に向かって虚しい運動を反復しながら力尽きた虫たちは、蒼ざめた蛍光灯の熱で体が焼ける音を発していた。その微かだが神経に障るノイズは、人間と人間以外の自然の関係に顕れる「小さな不協和」と「壮大なすれ違い」という言葉にならない寓話を残していたのかもしれない。

▽作家プロフィール
イブ・オーク  Ebe Oke
http://www.ebeoke.be
https://www.instagram.com/ebeoke?igsh=eXN1aWlrMGMzZnc2
https://www.dommune.com/streamings/2024/092602/

イブ・オークはロンドンを拠点とする作曲家兼マルチメディアアーティストで、米国サウスジョージア出身。音とパフォーマンスを用いて、アイデンティティ、テクノロジー、そして自然界との関係性を探求する実験的な作曲を実現している。これらの作品は、自然界のパターンや音(例えば菌糸体の構造や鳥や昆虫の鳴き声)を起点とし、再構成の素材として用いることが多い。これは、アメリカ南部の奥地にあるエキゾチックな鳥類保護区で過ごした幼少期に一部影響を受けている。
オークはカールハインツ・シュトックハウゼンに作曲を師事し、イギリス移住後はダンス、映画、アートインスタレーションの音楽制作に注力。アルバム『SPECIES』ではアイデンティティ、ジェンダー、癒やし、非人間的視点といったテーマを掘り下げ、鳥や昆虫の音を楽器として加工。非線形パーカッション、プログラミング、弦楽四重奏に加え、処理によって多重化された自身の声を組み合わせ、『SPECIES』に登場する複数のアバターを具現化している。
その他の作品には、アーティスト集団ジェネラル・アイデアの創設者AAブロンソンからの委嘱作『FIELD』がある。三部構成の音響的風景で、峰川貴子の彫刻的なボーカルも特徴的。スイス・アートバーゼル、オーストリア・ザルツブルク芸術協会、ベルリン現代美術研究所KWで発表されている。
2018年には、アーティストデュオ、フレドリクソン・スタラードから、船上のコレクションに展示される没入型インスタレーションのためのサウンドスケープ「AVALON」の制作を依頼され、2016年には、ローリー・アンダーソン、ブライアン・イーノとともにコペンハーゲンのスタジオで1週間を過ごし、その成果を収録したコラボレーション・ライブアルバム「DOKUMENT #2」を発表した。
2021年11月、テート・セント・アイヴスで「Aviary」が展示されました。この作品は、ロバート・トーマスとサミー・リーとのコラボレーションにより制作された、鳥の鳴き声と人工知能を組み合わせた生成的なオーディオビジュアルインスタレーションです。また、神経科学者のメンデル・カエレンから、彼の会社 Wavepaths のサイケデリックセラピーのための生成音楽制作を依頼された。
2022年11月、ロンドンにあるユニオン・ギャラリーで関連絵画の展覧会を開催するとともに、SPECIES LP1 & LP2 をリリース。この展覧会「I Feed My Skin Upon the Landscape, Awake! 」では、マシュー・ストーンとのコラボレーション作品と、ストーンがアルバムアートワークのために制作した肖像画が展示された。

張霆 ZHANG TING(チョウテイ)
Instagram: @cyou.tei
https://www.instagram.com/cyou.tei?igsh=b3dyamM5emNwcnFk

1995年 中国・山西省出身
2023年3月 京都芸術大学修士 イラストレーション専攻卒業

私の制作は、身体と精神の関係を中心に、微生物、遺伝物質、脳腸軸、感情や記憶の相互作用に関心を寄せています。初期は微生物や疾病を手がかりに、現代医学における身体環境の変化を観察し、やがて抑うつ、精神障害、記憶の退行などへとテーマを広げてきました。私にとって制作は「精神の解剖」であり、身心を理解するための方法でもあります。医学的な図像や解剖学的な手法を用い、筋肉や神経、内部構造を再構成することで、微生物の世界と個人の経験のあいだに潜む、目には見えにくい関係性を可視化しようと試みています。

受賞・掲載:
2023年 東京CAF賞 最終審査入選
2023年 『美術の窓』5月号「新人大図鑑」掲載
2022年 東京装画賞 学生部門 金賞
展覧会:
2025年8月 東京 Psycho-Anatomy 「精神の解剖 ― 内なる巡礼へ」 個展
2025年3月 東京 LURF GALLERY WAVE展 出品
2025年10月 東京 光婉 「魔女の誘惑」 出品
2024年5月 東京 Empathy gallery 「人間観察」 出品
2024年4月 東京 biscuit gallery 「grid3」 出品
2024年2月 東京 WAVE2024 展 出品
2023年12月 東京 代官山ヒルサイドフォーラム
「CAF賞2023 入選展」 出品
2023年5月 東京 AKIO NAGASAWA gallery 青山 出品
2023年2月 京都 京都芸術大学大学院 修了展 出品
2022年11月 東京 3331gallery WAVE2023 展 出品
2022年12月 東京 ギャラリー路草 東京装画賞展 出品

磯谷博史  Hirofumi Isoya
https://www.whoisisoya.com
https://www.instagram.com/hirofumi_isoya?igsh=MWU5OXUxNDR3d2RkbA==

1978年東京都生まれ。東京藝術大学建築科を卒業後、同大学大学院先端芸術表現科およびロンドン大学ゴールドスミスカレッジで美術を学ぶ。写真や彫刻の制作を通して、現実の認識や、物質と時間の関係性を探求している。空間、作品、観者の関係を振付と捉え、認識を揺さぶり、想像力に現実の思索を委ねる展示体験を編む。
近年の主な展覧会に『PRADA Mode Tokyo』(東京都庭園美術館、東京/2023)、『動詞を見つける』(小海町高原美術館、長野/2022)、『Constellations: Photographs in Dialogue』(サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ/2021)、『L’image et son double』(ポンピドゥー・センター、パリ/2021)、「『さあ、もう行きなさい』鳥は言う『真実も度を越すと人間には耐えられないから』」(SCAI PIRAMIDE、東京/2021)、『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』(ポーラ美術館、神奈川/2019)、『六本木クロッシング2019 : つないでみる』(森美術館、東京/2019)、『アルル国際写真フェスティバル -Le spectre du surréalisme』(Les Forges、アルル/2017)など。主な作品の収蔵先に、ポンピドゥー・センター(パリ)、サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)などがある。

主な個展:
2025 「パンゲアの破片」板室温泉大黒屋、栃木
2023 「今日と、持続」ARTRO、京都
2022 「動詞を見つける」小海町高原美術館、長野
2021 「『さあ、もう行きなさい』鳥は言う『真実も度を超すと人間には耐えられないから』」SCAI PIRAMIDE、東京
2018 「流れを原型として」青山目黒、東京

主なグループ展:
2023 「PRADA Mode Tokyo」東京都庭園美術館、東京
2021 「Constellations: Photographs in Dialogue」サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ
2021 「L’ Image et son double」ポンピドゥ・センター、パリ
2020 「インタラクション:響きあうこころ」富山市ガラス美術館、富山
2019 「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」ポーラ美術館、神奈川
2019 「六本木クロッシング 2019: つないでみる」森美術館、東京
2017 「アルル国際写真フェスティバル : The Specter of Surrealism」Les Forges、アルル、フランス

主なパブリックコレクション:
2019 サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ
2015 ポンピドゥ・センター、パリ

その他:
2016-2017 プロジェクトスペースstatements 共同ディレクター

  • イブ・オーク Ebe Oke

  • 張霆《Migration》 2025 / 油絵具、色鉛筆、キャンバス

  • 磯谷博史《同語反復と熱》2021 / LED、チェーン、蜜蝋、蛾の鱗粉

基本情報/アクセス

展覧会名
恵比寿映像祭2026 地域連携プログラム「言葉なき声、密やかな響き ―イブオーク チョウテイ 磯谷博史」Wordless Voices, Quiet Resonance. – Ebe Oke, ZHANG TING, Hirofumi Isoya
会期
2026/2/5(Thu)〜2/15(Sun)
会場
AL
住所
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南3-7-17
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