シーニュとは「記号」のことです。意味や情報は現実の一部を切り取り単純化したもので、他者との共有のためにその器となる記号は人間の生活に欠くことのできないものですが、共有を前提とした膨大な記号の渦に今や私たちはすっかり飲み込まれ、ひとつひとつその向こう側に、肉体で感じるべき剥き出しでまるごとの現実があるのだということを忘れてしまいます。
視覚による強力な記号機能をもって、かつて写真は人に考える材料となる豊かな情報を与え理性に寄与してきましたが、今日むしろそれは暴走し、人から思考を奪い、現実と人間との繋がりを絶とうとする方向に作用しているかのように見えます。
人は誰しも、他者と決して分かち合うことのできない「枠組み」を持っています。感受性や価値観、様々に言い換えることができますが、つまりはどのようにものを見、感じるのか、その色やぬくもりのようなもので、作品と呼ばれるものの本分はそれを問うことにあると考えています。
<展覧会名>
シーニュの境域
<展示内容>
写真展 KG 判 (102×152mm) モノクロプリント10点
<日時>
2023年11月18日(土)〜20日(月)
11/18 11:00〜21:00
11/19 11:00〜21:00
11/20 11:00〜18:00
<プロフィール>
山﨑慧一郎
1979年生まれ。國學院大學文学部哲学科卒。
記号と認識をめぐる観点から2013年頃より写真を独学。小さなモノクロプリントを中心に制作している。現物主義、秘密主義を旨とし、プリント以外の形で作品を公開しない。
https://keiichiroyamazaki.wixsite.com/blog