- JCA Gallery | 東京都
サイドミラー交信 SIDE MIRROR COMMUNICATION
- 2024/5/25(Sat)〜6/9(Sun) 終了
企画展「サイドミラー交信」では、出展作家である中田が、SNSのプラットフォーム上で発表し続けてきたイラストレーションが展開される。
この度、キュレーターの青柳との協働で組み上げられるものは、スマートフォンの画面上に映る画像として眺めるものとは異なる質感を伴った鑑賞体験となるだろう。
ただ眺めるだけではなく、鑑賞者の能動的な働きかけを通して作品の世界を探索するような、作品・鑑賞者両者の交信が生まれることを願う。
会期:
第1週⇨5月25日(土)26日(日)
第2週⇨6月01日(土)02日(日)
第3週⇨6月08日(土)09日(日)
入場料:無料
会場:
JCA Gallery
〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町3-12-9 NIビル B1F
開廊時間:13:00~18:00
企画展「サイドミラー交信」によせて
サイドミラーとは、広がる前景のなかで、遠ざかる景色をポツンと映すもの。
前の景色を見ているのに、後ろの景色も一緒に見えるのが面白いから、サイドミラーのモチーフが好きだと中田は語る。そのほかにも、扉や窓などのモチーフが登場し、2つの景色が共存する作品が多く見受けられる。
言うなれば中田自身、2つの居場所を持ち合わせている存在と言えるかもしれない。フリーランスのデザイナーとして個で動く傍ら、ボランタリーな活動として年齢や職種も異なる仲間たちと文化活動への参画に力を注ぐ。個と集団 という構成の違いに加え、共通言語やルールも全く異なる2つの居場所を持ち合わせ両者間を自由に行き来する彼自身、サイドミラーのある風景に重なるようだ。
この構造を「展覧会」という場における鑑賞者と作品の関係に置き換えてみる。作品と鑑賞者は相対する地点に立ち、両者の物理的な距離は縮まらない。だが、鑑賞者が能動的な働きかけをもって作品の世界を探索し、作品がそれに応えるように鑑賞者を刺激する時、作品と鑑賞者の間に一種のコミュニケーションーー「交信」が生まれるのではないだろうか。その時、鑑賞者と作品は、各々の生まれた場所や時間といった物理的な距離を飛び越え、自由に行き来する。
さらに、展覧会場における「交信」は鑑賞者と作品の間に留まらず、鑑賞者同士の間にも実現するだろう。作品を起点として鑑賞者が互いに接触すると、その日まで交わることのなかった2つの地点が繋がり「交信」の範囲は広がっていく。相反する2つの地点を自由に行き来する中田が願うのは、この「交信」の広がりの可能性である。
本展覧会は、その可能性を大きく前景化するものである。展覧会場では、異なる地点同士の「交信」をキーワードとして、作品と鑑賞者をはじめ、作品を起点とした鑑賞者同士のコミュニケーションを図る仕組みを作った。
展示室隅に配置された「交信カード」には、キュレーターによる作品の世界観をイメージしたショート・ストーリーが添えられ、作品を軸とした鑑賞者への問いや、行動を促す言葉が記されている。
静かに作品と向き合うのも素晴らしい時間だが、作品を介して他者と出会い、気持ちを通わせることで、作品への視点は増えるだろう。その場で発生した出来事や、出会った人々、交わした言葉や気持ち全てが本展覧会における「交信」の体験として刻まれたら、それ以上に嬉しいことはない。それこそが、企画展「サイドミラー交信」の目指すところだ。ここが賑やかな場所になることを願う。
キュレーター 青柳 シラ