- VALLOON STUDIO 渋谷 | 東京都
石川真悠「かつて海だったここは、」
- 2024/10/24(Thu)〜11/17(Sun) 終了
この展覧会では、かつて海であった場所が、長い時間をかけて台地や山、谷へと変化した自然の営みを写真を通じて感じ取ることができます。岩や苔、一滴の水など、自然の細やかな変化を捉え、そこに宿る時の記憶や生命の循環を表現しました。私たち人間が立つこの地が、永遠に続く自然の歴史の一部であることを感じながら、その時間の流れを感じ取ってください。流れる沢の音や風の匂いまでもが、鑑賞者に自然の存在感を思い出させるでしょう。
この写真展を通して、自然の壮大さと同時に、儚さを感じていただければ幸いです。
かつて海だったここは、台地となり、山となり、谷を作った。
私は何層にも積み重なった、時の記憶の上に立っている。
生きるもののように、暖かかったり冷たかったりする岩を触る。
触れた岩は、私が生まれる前から、そして死んだ後も変わらず、
この山の上に、雲より上にあるのだろう。
年輪のように時が刻まれなくても、岩に張り付いている苔が、
きっと毎日を覚えているだろう。
見上げれば、稜線がすぐそこにある谷で、沢の始まりを見つけた。
岩から滴る一滴が、谷に集まり大きな流れを作る。
山が雨を蓄え、地中を潜って絞り出す一滴だ。
その一滴は、沢を伝って人間たちの生きるところへと流れていく。
風が谷から沢の音を連れてくる。
かつて海だったここを思い出させるように、波のような音を。
石川真悠
ポートレート