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  • FUJI GALLERY SHINJUKU(フジギャラリー新宿) | 東京都
  • 松下誠子「窓枠の叛乱」展

  • 2024/12/21(Sat)〜1/31(Fri) 開催前

展覧会の見どころ

西新宿のヒルトン東京 地下1階に位置するフジギャラリー新宿では、本年2月の松下誠子「中庭の束縛」展に続き、2度目となる同アーティストの「窓枠の叛乱」展を2024年12月21日(土)より2025年1月31日(金)まで開催いたします。「中庭の束縛」展は長い制作活動の中で描いた未発表のドローイング作品とビデオ作品、今回の「窓枠の叛乱」展ではインスタレーションと2枚のパラフィン紙を用いたドローイング作品を展示いたします。2回の展覧会は、フェミニズムアーティストとしてカテゴライズされることの多いアーティストの過去から未来への軌跡を追うものです。

根強く残る固定観念や閉塞感に満ちた社会に生き、自身が抱える苦悩や葛藤にあらがいながら生きる女性たち。松下誠子はそんな社会と女性たちを1990年代よりインスタレーション、絵画、立体、写真、パフォーマンス、アニメーションなど様々な表現方法を用いて表現してきました。初期の鉄やコンクリートといった重厚で硬質な素材を用いたインスタレーションは、社会的抑圧や制度的な問題を鋭く問いかけ、近年の作品では、鳥の羽根、ワックス、フェルト、パラフィン紙といった軽やかで繊細な素材を駆使し、より内面的かつ心理的な領域に焦点を移しています。この素材の変遷は、彼女が外部の構造的なテーマから個人の内的な感覚や存在の深層へと向き合うようになってきたことの表れであり、常に時代や社会との関係性を再考している姿勢であると考えます。

今回の展覧会の象徴である「窓枠」は、風景を切り取るとともに「内側」と「外側」の境界でありながら、両者を繋げる役割も果たしています。その「窓枠」が失われた時、私たちはむき出しの内と外の世界を目の当たりにし、これまでの漠然とした安心感は消え、当たり前だった風景も異なって見えるのではないでしょうか。同展覧会では、存在していたはずのフレームを取り除き、脆く繊細な2枚のパラフィン紙に描いたテーマの異なるドローイングを重ねることで、ようやく一つの風景(作品)が成立しています。ところが、重なっているがために2枚目の絵はうっすらとしか見ることができません。それはまるで多層的であるがためにそれぞの要素が見えにくくなっている昨今の状況を彷彿とさせるかのようです。


【アーティスト・ステートメント】
展覧会を二度に分けて展示をするプログラムとなり、「窓枠の叛乱」はその2回目にあたる。1回目にあたる展示「中庭の束縛」は、未発表のまま長年眠っているドローイングの展示であった。すでに描き終えてしまった作品と向かい合うことは、主観的な愛着よりも時間の針が振幅して棘にもなりかねないので、自分の中に出口のない「中庭」を作り束縛の塀を張り巡らした。そうした対面の作業から余剰が生まれれば、「中庭」から外界に繋がる通路への扉を作ることが出来るのではないかと考えた。幸いにして余剰が生まれたが、唐突に窓を構成する四本の枠がばらばらと舞い降りてくるイメージにおそわれた。このばらばらになった窓枠は、まるで「ニーチェの馬」のように役割を投げ出したのだ。今の、この世界の許しがたい状況下で何も出来ない私が発狂する前に、まるで身代わりのように、窓枠が叛乱を起こしたかのようだ。

これは絶望だろうか、それとも新しさへの誘惑なのか。

もし新しさへの誘惑が少しでもあるとすれば、窓には絵画のフレームのような眼差しをもっているからだ。扉は出入り自由だが、窓は複雑な「目」のように境界線的な存在でもある。

時折、私の 脳裏には窓全体が図になるものを何も持たず、地となる平べったい空だけの風景が浮かぶ。風が運ぶ汽笛の音や鋭い野鳥の声、囚人が逃げた夜のヒステリックな警報の音が図となることもあるし、窓枠の隅に雪の吹き溜まりを見つけることもあったが、刻々と色を変えていつしか暗闇になっていく風景を飽きることなく眺め続けた日々がある。それは終焉ではなくいつか来る新しさへの誘惑ではなかったのか。今、私はその誘惑に身を任せてみることで、過去を歩きながら実に向かう図の風景を描き写す試みをしてみようと思う。

松下誠子

FUJI GALLERY SHINJUKU

展覧会内容

【展覧会概要】
松下 誠子展「窓枠の叛乱」展
Seiko MATSUSHITA’s solo exhibition “Rebellion of Window Frame”
会期:2024年12月21日(土)〜 2025年1月31日(金)
休廊:月曜日、火曜日および1月1日、2日
時間:10時〜18時
会場:FUJI GALLERY SHINJUKU(フジギャラリー新宿)

【松下誠子について】
北海道函館市出身、神奈川県在住。
共立女子大学卒業後、金工を学ぶ

〈主な個展〉
2024 中庭の束縛(フジギャラリー新宿/東京)
2023 落下する玩具 ― 良心をさがして(太郎平画廊/東京)
2022 Mother’s Voice-Images for the animation(ALELIER・K/横浜)
2021 燃えるスカート(UMAKART Gallery/ブルノ/チェコ)
不可侵のパラフィンドレス・リボンのキャンペン(学習院女子大学文化交流ギャラリー/ 東京)
2022 家の舌(RED AND BLUE Gallery/東京)
2018 革命前夜2 - 風景が変わる時(RED AND BLUE Gallery/東京)
2017 Gun-zo(Gallery Hasu no hana/東京( 2014 赦される庭 )
2016 Security Blanke(パフォーマンス&インタビュー)( ギャラリー・ルデコ/東京)
2014 わたしの中の異物 - ヴァイオレンス(東邦画廊/東京)
2012 わたしの中の異物(双ギャラリー/東京)
2010 INNER - 彼女は自分の事で忙しい(Soh Gallery K3/東京)
2002 Security Blanket(パフォーマンス&インタビュー)(アート・ポジションズ/マルセイユ/フランス)
2001 Zone of Retardation(ギャラリー・モニカプレス/ドイツ)
Security Blanket(パフォーマンス&インタビュー)(ケルン アルトシュタッド/ドイツ)
2000 Self Portraits(アンザイアート・オフィス/東京)
1999 ガレリアキマイラ/東京
1998 遅滞(ギャラリー・クラマー/東京)
1997 微妙な消息(インフォミューズ/東京)
1994 球に向かう瞬間の中有(ギャラリー日鉱/東京)
1992 微笑(ギャラリーK /東京)

〈主なグループ展〉
2023 Summer Exhibition 2023(Galleri Heike Arndt DK/ケティンゲ/デンマーク)
あなたが眠りにつくところ(ジョイス・ラムと二人展)(藤沢アートスペース/神奈川)
Women’s Lives 女たちは生きている(さいたま市プラザノースギャラリー/埼玉)
2022 Galleri Heike Arndt/ベルリン&ケティンゲ/ドイツ&デンマーク
2021 Loop展(工房親/東京)
Das Fremde in der Isolation - 孤立のストレンジャー(Hall Zollstock/ケルン/ドイツ)
2019 彼女たちは叫ぶ、ささやくーヴァルネラブルな集合体が世界を変える(東京都美術館)
2017 本当のことは言わない(HAGISO/東京)
2015 HOSPITAL ART(Hasu no hana/東京)
2013 秘境を求めて(洞窟現代/神奈川)
五人展(東邦画廊/東京)
2012 ART田ノ島39(野外展/豊橋)
2010 双ギャラリー25周年記念展(Soh Gallery K3/東京)
2006 Art Full アート湧くはけの森(小金井市立はけの森美術館/東京)
2001 Belle de jour(アーヘン/ドイツ)
Zalzmannbau(デュッセルドルフ/ドイツ)
1999  Zoomo, Stadtische Kunstsammlung Escweiler(エシュバイラー/ドイツ)
1998 Tokyo Rooms(ギャラリー アーティクル/ケルン/ドイツ)
1996 Nature-Material and Image(アートハウス美術館&エンハロット美術館/イスラエル)
1995 褄恋芸術祭(野外展/褄恋高原)
1992 方法作家会議国際交流展(ソウル市文化芸術振興院/韓国)
SEISEI(チョンオンギャラリー/釜山/韓国)

  • 「開かない翼」(レイヤードローイング)
    2024年
    パラフィン紙にオイルパステル、木炭
    330×480mm

  • 「ひとりでいなさい」(レイヤードローイング)
    2024年
    パラフィン紙にオイルパステル、木炭、油絵具
    330×480mm

  • 「さよならが言えないで」(レイヤードローイング)
    2024年
    パラフィン紙にオイルパステル、木炭、油絵具
    610×450mm

  • 「camp」(レイヤードローイング)
    2024年
    パラフィン紙にオイルパステル、木炭
    295×210mm

基本情報/アクセス

展覧会名
松下誠子「窓枠の叛乱」展
会期
2024/12/21(Sat)〜1/31(Fri)
会場
FUJI GALLERY SHINJUKU(フジギャラリー新宿)
住所
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-6-2 ヒルトン東京 地下1階 ヒルトピアショッピングアーケード内 (Space32)
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